精神科医療で治療対象となる疾患は、大きく分けると次の2群に分類することができます。それぞれの特徴をご説明しましょう。
 
 
1.狭義の精神障害に含まれるもの
 
統合失調症、気分(感情)障害(うつ病、躁うつ病)などです。これらは中枢神経系の何らかの障害によって発病しているいわば脳神経系の疾患ですが、病気の原因についてはまだ根本的な原因は分かっていません。しかし脳内神経伝達物質(ドパミンやセロトニンなど)の代謝異常が関係しているという説が有力です。

狭義の精神障害に含まれる精神疾患の中で最も頻度が高く代表的なものが統合失調症です。統合失調症の具体的な症状としては、幻聴(「自分の噂を話し合っている声が聞こえる」といった実際には聞こえるはずのない声が聞こえる)、妄想(「自分が監視され狙われている」という現実ではない誤った体験)といった症状が挙げられます。また長期の治療経過の中では連合弛緩(思考のまとまりが悪くなる)、自閉(周囲への無関心)、引きこもりが出現することも知られています。これらは統合失調症残遺症状とも呼ばれます。
幸いなことに1960年代から抗精神病薬(向精神薬に分類される薬剤)が治療に使われるようになって、これらの症状を随分うまく改善させることができるようになりました。以前にはフェノチアジン系向精神薬やブチロフェノン系向精神薬が代表的な薬剤(定型坑精神病)でしたが、最近は非定型坑精神病と呼ばれる新しいタイプの薬剤がよく使用されるようになりました。
定型坑精神病はドパミン拮抗作用を主とするのに対して、非定型坑精神病はドパミンとセロトニンの両者に対する拮抗作用を持つという特徴があります。統合失調症の急性期には、幻聴や妄想、感情障害に伴って、行動の乱れ(興奮や徘徊など)が生じやすく、入院が必要となることも多いのです。茨木病院ではこういった精神障害の患者さんの入院治療に積極的に取り組んでいます。

急性期の症状が改善した後には、心身の消耗状態(精神病残遺症状)が生じます。言わば病気の慢性状態といえるものです。この時期には、規則正しい通院治療と薬物療法に加えて精神科リハビリテーションが必要です。茨木病院ではデイケアセンター、作業療法室、地域生活支援センターを併設し、患者さんの社会復帰と生活支援に積極的に取り組んでいます。
 
 
 
2.ストレス性障害に含まれるもの
 
主に心因や環境因(ストレス)によって生じる疾患です。不眠症、反応性うつ状態、パニック障害、強迫性障害、身体化障害、摂食障害などです。
これらは外来治療で治療を行なうことが原則です。ですから入院治療が必要になることは余りありません。外来診療の中で症状そのものの特徴を患者さん自身が理解し、医師と人間関係や家庭環境や職場環境などについて見直し、何が問題になっているか話し合うことが大切です。不安やいらいらといった神経症症状(ストレス症状)に対しては薬物療法を行ないます。

抗不安薬として最もよく用いられるのがベンゾジアゼピン系抗不安薬です。抗うつ薬には、従来からある三環系や四環系抗うつ薬に加えて、近年開発されたSSRIやSNRIと呼ばれるタイプの薬剤がよく用いられるようになりました。
 
 
 
3.その他の疾患
 
認知症や中毒性疾患などです。認知症の患者さんは身体合併症の治療を同時に必要とすることが多いために、内科医が常勤していない当院では対応できません。またアルコール依存症・薬物依存症などの中毒性疾患は、心理教育を含めた専門的治療プログラムが必要ですので、当院では対応できません。

かつては閉鎖的で敷居の高いイメージのあった精神科病院も、最近はますます社会に開かれたものになってきています。そしてメンタルヘルスに対する社会の関心も高まって来ました。そこで精神的心理的な問題で専門家に相談したいと思われたら、まず気軽に一度外来にいらしてみて下さい。専門的立場からご助言差し上げたいと思います。

 
 
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